Q:ペアレントトレーニングって何?
A:簡単に言うと・・お母さんやお父さんに行動理論に基づく考え方や技法を学んで貰うことで、治療者の協力者となって貰うことです。その為、子どもに対する直接的な支援は、治療者ではなく保護者に行って貰います。
専門機関での訓練(※)だけでは「般化(はんか:できるようになったことが広がっていくこと)」が難しいという面もあったため
例えば・・・「歯磨きを自分でできるようになって欲しい」という目標があった時、以前は、「専門家と子どもだけで訓練をする」ということが多くあり、「訓練場面ではできるけれども家に帰るとできなくなってしまう」と言う声がよく聞かれました。何故なら、専門機関での訓練は、保護者が訓練場面を見ることができない為に、家庭場面ではどのような支援をして良いか分からないといった問題もあったからです。そこで、より効果的に新しい行動を子どもに身に付けて貰う為にも、保護者に訓練の協力者となって貰えないかと いうペアレントトレーニングの考えが生まれたのです。
(※)ここでの訓練とはPT・OT・ST等ではなく、身辺自立などの「日常生活でできるようになって欲しいこと」を指します。
・家庭場面だと目標に対して繰り返し訓練ができる
・実際の生活場面での訓練なので、専門機関で行うよりも「より現実的」な
訓練になる
・家族がこどもに対して「どう接したら良いか」が分かるために、親子関
係・きょうだい関係も改善される可能性が高くなる
・ペアレントトレーニングに参加した保護者同士で、子育てに関する不安や
悩みなども共有できピアカウンセリング(当事者同士で悩みや不安を共有
することでしんどさを軽減できること)的な効果も期待される
大別して2つの流れがあります(異なるものではなく共通部分も多くあります)。
・肥前方式親訓練プログラム~日本最初の体系的プログラム→
佛大方式(京都ペアレントトレーニング研究会が作成、実施)
佛大方式で対象としてきたお子さんの行動(例:衣類の着脱、排泄、食事
等の身辺自立、いわゆる「やる気」の問題まで幅広く対応)
・奈良方式(奈良教育大学)並びに精研式プログラム(主にAD/HDのお子さ
んを対象、「やる気・親子関係改善」を主眼に・「ほめる」・ロールプレ
イを多用)
(一回2時間:前半50分講義、後半、小グループでの個別セッション約1時間)
≪プログラムの一例≫
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期 日 |
出欠 |
内 容 |
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1 |
2012年 4月 5日(木) |
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前 半 |
後 半 |
自己紹介とオリエンテーション |
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2
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4月 19日(木)
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講義1.行動の観察と記録 (講義担当者: ) |
個別課題の検討 |
3
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5月 10日(木)
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講義2.環境の整え方 (講義担当者: ) |
個別課題の検討 |
4
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5月 24日(木)
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講義3.強化と強化子 (講義担当者: ) |
個別課題の検討 |
5
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6月 7日(木)
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座談会. グループの枠を超えての 情報交換、全体での情報の共有 |
個別課題の検討 |
6 |
6月 21日(木)
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講義4.ポイントシステム (講義担当者: ) |
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7
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7月 5日(木)
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講義5.困った行動の減らし方 (講義担当者: ) |
個別課題の検討 |
8 |
7月 19日(木) |
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個別課題の検討~まとめなど |
修了式 |
9 |
9月 6日(木) |
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フォローアップ①お子さんの様子等を教えて頂きます |
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10 |
月 日(木) |
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フォローアップ②お子さんの様子等を教えて頂きます |
①お子さんにできるようになって貰いたい行動、やめて貰いたい行動をそれぞれ5つずつ挙げてもらい、最も取り組みやすい行動(もしくは緊急性の高い行動)を1つ決定
②決定した行動(目標行動)を更に具体化(例:ちゃんとご飯を食べる→夕食中は食べ終わるまで立ち歩かない※)
※一度決めた目標行動はその行動がクリアされるまで基本的に変更しません。その為、現実的に実施可能な目標行動の制定が必須となります(長期間の対応が必要な行動・ハードルが高すぎる目標行動は実施困難)。
③その行動の前後関係を分析
(例:目標行動が「夕食中は食べ終わるまで立ち歩かない」の場合)
きっかけ → 反応 → 結果
<テレビが見たい> < 立ち歩く > <テレビが見られる>
④「きっかけ」を変えることで改善される場合
環境の調整(例:テレビを消す・DVDに録画等、TEACCH、絵カード等)
⑤「反応」「結果」を変えることで改善される場合
強化(例:立ち歩くことなく夕食を食べ終えたら好きなシール1枚、シール
3枚と子どもの好きなモノや関わりと交換※)
※社会的に望ましい行動に対して『報酬』が貰えるような流れを作ってい
きます
『報酬』について
・「何かができた時に子どもにものをあげることは動物の訓練みたいで抵抗
がある」
・「ワイロのようで嫌だ」「ずっとご褒美をあげ続けないといけないの?」
大切なのは「社会的に望ましい行動ができたら報酬を貰える」という社会のルールを身 に付けて貰うことなのです。また、大人も働くことで給料が貰えますし、子どもに与える報酬もお菓子や玩具などの「モノ」よりも、「誉め言葉」や「関わり(一緒に遊ぶ等)」の方が効果的な場合も多くあります。そして、大切なことは、「モノ」を報酬とする際にも少しでも良いので「認める言葉」をセットにすることが大切です。そうすることで、今後、「モノ」が無くても「認められる言葉」が「社会的な報酬(強化子)」となっていきます。また、「お菓子あげるから静かにして!」はワイロになりますが、「買い物中に走り回らなければお菓子を1つ買えます」と約束をすると報酬になります。繰り返しになりますが、「良い行動を強化すること」がペアレントトレーニングの基本となります。
⑥できないときの手助け(身辺自立ができている子どもに対してはより詳細な『ポイントシステム』の説明)
・目標行動が具体的かどうかの確認→目標行動の課題分析(できるだけ「細
かいステップ」に分けること)→今の段階で、どのステップまでできてい
るかを確認→「できることでスタートライン」を決定し手助けを実施
・指導の順序(順向型、背向型の原理)の工夫
・指示の明確化
・プロンプティング(手がかかり)の利用等
⑦困った行動を減らすには
・望ましい行動を待つ為の計画的な無視の利用
・他の行動や両立しない行動の強化
・レスポンスコストの利用
・タイムアウトの実施等